火を灯した日
2014年。
今みたいにエキニシに人が集まっていたわけじゃない。
「広島駅の裏側」
そんな言われ方をすることも多かった。
正直、お金もなかった。
人もいなかった。
経営の知識なんて、もっとなかった。
あったのは、
「自分の店をやりたい」という気持ちだけだったと思う。
物件を見て、
ここでやると決めた。
不安はあった。
失敗するかもしれない。
借金だけ残るかもしれない。
でも、それ以上に、
「やらなかった後悔の方が大きい」
そう思った。
だから店を出した。
バルタンの始まりは、
立派な経営計画でも、
大きな資本でもない。
小さな店と、少しの勇気から始まった。
最大の失敗
飲食店経営は、
成功より失敗の方が多い。
出店。
採用。
人間関係。
資金繰り。
今振り返ると、
うまくいかなかったことの方が圧倒的に多い。
思ったように人が育たないこともあった。
信じた人と離れることもあった。
お金がなくて眠れない夜もあった。
経営者として一番苦しかったのは、売上が悪いことよりも、
自分の未熟さで誰かを傷つけたり、
期待に応えられなかった時だった気がする。
でも失敗は消えない。
だからこそ財産になる。
あの時の失敗がなければ、
今の判断はできなかった。
遠回りだったかもしれない。
それでも必要な時間だったと思う。
コロナと大火災
2020年。
街が止まった。
コロナだった。
飲食店にとって、
経験したことのない時間だった。
先が見えない。
いつ終わるのかも分からない。
そんな中で起きたのが、
2021年11月11日。
エキニシ大火災だった。
バルタン本店が、全焼した。
見慣れた景色が変わった。
街も変わった。
会社も変わった。
正直、何度も心が折れそうになった。
それでも、
守るものだけは決めていた。
店を守る。
仲間を守る。
街との繋がりを守る。
削るものは削った。
我慢もした。
でも守るべきものだけは手放さなかった。
振り返ると、あの時間が会社を強くしたと思う。
変化の始まり
創業してから長い間、
自分自身が現場の中心だった。
毎日店に立ち、
毎日判断していた。
でも店舗が増えた。
社員も増えた。
気付いた。
このままでは会社が大きくならない。
人に任せる。
仕組みを作る。
言葉にする。
それが必要だった。
評価制度。
店長制度。
インセンティブ制度。
情報共有。
採用。
全部、後回しにしてきたことだった。
でも、
強い会社は偶然できない。
強い組織には理由がある。
そう思うようになった。
今のバルタンは、現場の経営から、組織の経営へ変わろうとしている途中にいる。
これから
目標は店舗数じゃない。
売上だけでもない。
広島駅周辺に根を張り、
人が育ち、
挑戦できる会社を作ること。
火ノ告。
白黒。
そしてその先の新しい店。
全部目的ではなく手段だと思っている。
目指しているのは、広島で一番強い居酒屋会社。
それは店舗数の話ではない。
利益だけの話でもない。
お客様に選ばれ続けること。
社員が誇りを持てること。
地域に必要とされること。
その積み重ねだと思う。
まだ途中。
むしろこれから。
次の10年も、火を灯し続ける。
それがバルタンの物語です。
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